花粉症と免疫療法…発症の条件はバケツ理論から天秤理論へ
今年は昨年よりもスギ花粉の飛散が始まるのが早いようで、私も1月からすでに鼻がムズムズすることが何度かありました。
花粉症などのアレルギー反応は“免疫の過剰反応”です。鼻粘膜内に花粉が入ると異物として認識され、抗体が作られるのがアレルギー反応の「感作」という最初の段階です。また、毎年花粉を浴びることで抗体と花粉抗原との反応が繰り返されて好酸球という細胞が多くなり上皮細胞を傷つけて過敏な状態が引き起こされるということもあるようです。
感作や過敏な状態が起こるかどうかは体質や環境など人によるので、「アレルゲン(花粉症の場合は花粉)を浴び続けて人によってそれぞれ違うある量を超えるとあふれるようにアレルギー反応が起こる」といった“バケツ理論(あるいはコップ理論)”が発症条件の理論として信じられてきました。
しかし現在ではそれは間違いであると考えられています。
2014年から保険適用になり現状スギ花粉症の根治療法として期待されている「免疫療法」は、ごく少量のアレルゲンの投与を繰り返しおこなって身体を慣らすことでその物質(花粉)に過剰反応しないように体質を改善させていくという減感作療法で、「バケツ理論」からするとバケツに花粉をいれてあふれさせようとしていることになってしまいますが、花粉やアレルギー反応を起こす細胞が蓄積されるわけではなく、免疫を獲得するような療法です。
ただ、アレルギー反応には“閾値”という概念があって、アレルギー発症のボーダーやスイッチといったものが人によってさまざま異なるので、バケツ理論が信じられてきたのです。
免疫療法によってバケツ理論が否定された現在は、かわりに“天秤(あるいはシーソー)理論”が注目されています。つまり、免疫力が高ければ体内に花粉が入ってきても症状が出ない/免疫力を上回る量の花粉が体内に入ってくれば症状が出る、というもの。免疫療法にも花粉症(アレルギー反応)の閾値の概念にも矛盾しませんし、症状の出方の強さが年によって更には日によって違うことの説明にもなります。
つまり、まずは花粉が体内にできるだけ入ってこないようにマスクやゴーグルなどで守ることが大切ですが、さらに、睡眠や運動や食事や心身のケアによって免疫力を上げて過剰反応を起こさせないことで、症状が軽くなることが期待できるということです。
カイロプラクティックで花粉症やアレルギーに即効性のある施術ができるというわけではありませんが、あらためて、免疫力を上げることや自律神経をととのえることの重要性を感じ、脊柱関節のサブラクセーション(カイロプラクティック的な“ゆがみ”)との関連についても考えさせられます。
(M)