不眠症・睡眠障害
不眠症は今や日本の国民病とも言われており、成人のおよそ5人に1人が睡眠に関する悩みを持ち、20人に1人が睡眠薬を服用しているという報告があります。
睡眠の悩みとしては、夜なかなか眠れない,眠りが浅く朝目覚めてからも眠い,トイレにいきたいわけでもないのに夜中に何度も目が覚める,起きる予定の時間よりもだいぶ早い時間に目が覚めてしまうといったことをよく耳にします。
寝ようと思って布団に入ってから30分〜1時間以上経過しても眠れない(入眠困難)タイプの人は、また今日も眠れないんじゃないかという不安がストレスになって負のループに陥りやすいです。
就寝中に何度も目が醒める(中途覚醒)タイプは、またすぐに眠れることが多くてもぐっすり眠れた感じが得られず、また、早い時間に目が覚めてそのまますっきり起きられないタイプなどの場合も、日中に心身の不調をきたしやすいでしょう。
人間は1日を周期として覚醒と睡眠を繰り返すサーカディアンリズムを持っています。そして自律神経・内分泌機能の多くは睡眠―覚醒のリズムに同調して日内リズムがあります。
ヒトを含む多くの生物にとってこのリズムの調節・睡眠作用をうけおっているのがメラトニンというホルモンです。メラトニンは体内時計からだけでなく、体外の環境光によっても分泌が抑制されます。夜中まで電気を点けっぱなしていたり、パソコンやスマホを見ていたりして強い光を浴びていると睡眠が起こりにくくなるのはメラトニンの分泌が抑えられてしまうからです。そしてそのうちに睡眠―覚醒のリズムが乱れてくると考えられます。メラトニンは加齢により減少し、全睡眠は年齢とともに短くなります。
睡眠が起こると、筋肉の緊張が低下して反射活動も弱くなり、呼吸が深くゆっくりになって心拍数や血圧も低くなるといった身体の活動水準が低下した状態になります。θ(シータ)波やδ(デルタ)波といったゆるやかな脳波がみられますが、それだけでなく、覚醒時を思わせる脳波が周期的に現れるのが普通です。それがレム睡眠と呼ばれる時期の睡眠で、成人ではおよそ90分毎に出現・睡眠全体の約20%を占めます。レム睡眠の時期には夢を見ていることが多く、眼球が急速に動き、心拍数や呼吸も乱れて、顔面や指の微細な筋肉に断続的な小さな収縮がみられることもありますが、通常全身の筋緊張は消失しています。
人体の睡眠―覚醒のリズムや睡眠時の身体の変化についていろいろみてきましたが、睡眠に対するカイロプラクティックの効果については、残念ながら科学的なデータが乏しいです。
それにもかかわらず、アジャストメント(カイロプラクティックの矯正)を受けるようになってよく眠れるようになった,すっきり起きられるようになったという報告がたくさんあるのは、筋緊張が緩んだり、呼吸が深くなったりする入眠の準備や、自律神経のはたらきや睡眠―覚醒のリズムやホルモンの分泌がととのうことを背骨の矯正による神経のはたらきの改善がサポートするからだと考えられます。
(M)