トリガーポイント
近年、慢性痛の原因の一つとして注目されるようになった「トリガーポイント」というものをご存知でしょうか。
「筋筋膜性疼痛と機能障害:トリガーポイントマニュアル」という表題でトリガーポイントの手技療法に関する初めての書物を出版(1983年)したTravellとSimonsは筋筋膜トリガーポイントを次のように定義しています。
『骨格筋にある刺激に過剰な場所に認められる索状硬結中に触知できる過剰な小結節と関連がある。その場所は圧すると痛く、特有の関連痛や関連性の過敏、運動機能障害あるいは自律神経症状が生じる』
難しく書いてありますが、トリガーポイントのうち筋筋膜トリガーポイントは、体表から硬く触れる筋肉や筋膜の“しこり”で、押すと痛みを引き起こす「発痛点」です。押されると「ツボ」のように感じる方も多いでしょう。
臨床症状としては、トリガーポイント罹患筋の局所疼痛,灼熱感,圧痛,特有の関連痛,自律神経および固有感覚の障害,(血液の循環が悪くなることによる)浮腫などがあります。
「特有の関連痛」というのは、筋筋膜トリガーポイントを圧迫して活性化したときに、圧迫した地点以外の近くまたは離れた部位に痛みが発生するというものです。個々の筋肉に特徴的,特異的なパターンを持っています。
ここでは触れませんが、皮膚や靭帯や骨膜などのトリガーポイントもあります。
筋肉/筋膜のトリガーポイントは組織の微細な損傷であり、当該の筋肉/筋膜への過度な伸張や短縮、もしくは負荷が長引いたとき…つまり、急激な動きや繰り返し動作のような「使いすぎ」あるいは、長時間の不良姿勢や、関節の可動制限などに伴う「動かなすぎ」の場合に生じやすいと言われています。筋筋膜トリガーポイント筋肉の柔軟性を阻害し、筋力を低下させ、固有受容(センサーのようなもの)を混乱させます。
カイロプラクティックが第一に重視するのは関節機能障害に対するマニピュレーション(関節の“ゆがみ”の矯正)ですので、トリガーポイントを生じさせるような可動制限のある関節や、筋筋膜の治癒を妨げるような関節のゆがみなどを見つけてアジャストメント(カイロプラクティックの矯正)をまずおこないます。
しかしそれと同時に障害を受けた筋を放置した場合、治癒までが長引いて次の不必要な障害を招くことがあるため、神経筋骨格系の専門職として、適切に対応できるように筋肉の病態生理学と筋筋膜トリガーポイントについて学び、触知訓練等をしています。
(M)