肩腱板損傷(断裂)
肩関節をある方向に動かした時に、引っかかりとともにピキッとするような刺激痛が生じるという場合には、肩腱板の筋肉に軽微な断裂(損傷)が起こっているかもしれません。
いわゆる五十肩の場合はどの方向に動かそうとしても痛い(動かせない)ですが、腕のあげ始めだけ痛くてあげてしまえば痛くなかったり、腕を肩の高さくらいにあげて後ろに引いたときだけピキッとしたりするなど、損傷部位に大きな負荷がかかる動きで痛みを生じるという違いがあります。
一般に肩関節と呼ばれる上腕骨と肩甲骨との関節(肩甲上腕関節)は、股関節と同様に多軸に可動する球関節で、股関節に比べてはまり込みが浅く不安定な関節です。そのため、肩の丸みを作っている外側の筋肉だけでなく、肩腱板(回旋腱板)と呼ばれるインナーマッスルが付いています。腱板筋は棘上筋,棘下筋,肩甲下筋,小円筋の4つです。
腱板の断裂で多いのは腕を横からあげる時の初動ではたらく棘上筋(腱)と、肩を外旋したり開いたりする時にはたらく棘下筋です。
五十肩(四十肩)のときに癒着を起こしやすい肩甲下筋はその次で、小円筋が断裂することは滅多にありません。
転んだりぶつけたりといった強い衝撃を受けたわけでもないのに筋肉や腱が断裂してしまうのは、オーバーユース(使いすぎ)によるものと考えられます。もちろん通常であれば、趣味のスポーツやましてや日常生活で使う程度で損傷は起こりませんが、肩甲骨と上腕骨あるいは肋骨との位置関係の変位により肩甲上腕関節の可動制限がある状態や、肩関節周囲の筋力バランスの乱れ,応力集中などで繰り返し動作によって肩腱板に負荷がかってしまうと問題です。
つまり、普段あまり肩を動かす機会がない人が急に動かしたり、猫背姿勢や巻き肩になっている状態でバレーボールやラケットスポーツなど繰り返し動かしたりした場合にも損傷しやすいということです。
棘上筋は特に、猫背・巻き肩で大胸筋が引っ張って肩甲骨が前外方に変位することや、上腕骨が上方変位したり肩関節外転(横に開く動き)時の関節(上腕骨頭)の下方滑りが制限されたりすることで、肩峰と上腕骨との間で機械的に衝突してしまうため、断裂が起こりやすいです。その上衝突しやすい腱部は血管も少なく、治癒が遅いので治らないとも言われます。
しかし、完全断裂でなく小〜中程度・部分断裂あれば、前述のような肩甲骨や上腕骨の変位や姿勢の乱れ、筋力バランスなどをととのえていくことで負荷が減り、断裂していない部分の筋力や回復力が上がって疼痛の改善がみられると考えられ、カイロプラクティックでは主に首や背中(頚椎や胸椎)の問題を見つけて矯正(アジャストメント)をおこなっています。
(M)