カイロプラクティックは痛みに効果がある?
インターネット検索で、『カイロプラクティック』の後にスペースを入れると、『効果』が候補に出てきます。カイロプラクティックがどんなことをするのか、どのくらい効果があるのか、といった点が気になるのだと思います。
一般社団法人日本カイロプラクターズ協会(JAC)のホームページを見ると、カイロプラクティックとは、「骨格の歪み、特に背骨の異常を手技によって調整することで神経の働きを回復する療法」です、とあります。しかし、コレだけでは実際は何に効果があるのかよく分からないからか、適応症と禁忌についても紹介されています。
『適応症
腰痛、頭痛、頚肩腕症候群、むち打ち症、肩こり、膝の痛みなど運動器疾患系にすぐれた効果を発揮します。その他、疲労回復、姿勢改善、自律神経失調、など、また自律神経を介して内臓の機能改善、ストレスの緩和などにも有効であり、高齢者へのケアや生活習慣病、慢性病などの効果も注目されていま す。風邪予防や健康増進のため、健康管理としても利用されています。
禁忌
刺激を避けなければならない病気(癌、出血しやすい病気、高熱の出る病気、伝染病など)』
症状としては、痛みを伴うものが多いですね。では、カイロプラクティックは痛みに対して効果があるのでしょうか?鎮痛剤とは、どう違うのでしょうか?
鎮痛薬には、おおざっぱに分けて2種類あります。非ステロイド性消炎鎮痛薬とオピオイド鎮痛薬です。非ステロイド性消炎鎮痛薬は、痛みの現場でプロスタグランジン(痛みを感じやすくする物質)の生成を抑えることで、痛みをやわらげます。オピオイド鎮痛薬は、痛みを伝える神経と痛みを感じる脳に働くことで、痛みをやわらげます。現場で痛みをおさえるか、痛みを感じないように麻痺させるか、と言い換えると分かりやすいでしょうか。
カイロプラクティックで背骨を調整すると、痛みはどう変化するのでしょうか。痛みは、感覚神経によって脳に伝えられます。感覚には、触覚、圧覚、温痛覚、深部感覚(固有感覚)があります。この中の痛覚が刺激されて、神経を介して脳に情報が伝わります。カイロプラクティックの手技を用いることで、背骨の関節の動きを整えます。その結果、関節がどの位置にあるのかという深部感覚(後索路)が促通されます。痛みは、温痛覚を伝える外側脊髄視床路を通っていますので、別ルート(後索路)が促通されることにより、抑制がかかり神経の働きが正常化されると思われます。
カイロプラクティックで神経の働きが正常化されると、現場で1の痛みは1のまま脳に伝わる状態になる、とイメージすると分かりやすいと思います。痛みに過敏になっていると、現場では1の痛みのはずなのに、脳に伝わるときには5にも10にも感じられることがあります。こうした間違った情報が脳に伝わらないように、背骨を介して神経に働きかけているわけです。もちろん、これは神経の働きという側面に着目した場合の話です。関節の可動制限が物理的に解消されることにより、現場の痛みが減少する側面も、カイロプラクティックにはあると考えています。
カイロプラクティックは、痛みの現場の情報を正しく伝わるようにできるという意味でも、痛みに効果があると考えています。例えば炎症の痛みがある場合(プロスタグランジンがまだ生成されている段階)、炎症が治まらないと痛みはゼロにはなりません。しかし神経機能を正常化しておくことで、自然治癒力が発揮されやすい状態になり、治癒過程が促進されます。すると人間は、自分の力で良くなっていけるのです。(G)