背筋(はいきん)
現代人の筋力低下が叫ばれる昨今ですが、背筋も例外ではないようです。
背筋(はいきん)と一口に言っても、背中には皮下の浅いところから背骨のきわの深いところまでさまざまな筋肉があります。
浅いところにある背筋は「浅背筋」といって、背部の骨格(後頭部から背骨、骨盤、肩甲骨、肋骨など)から腕にかけて付いていて、肩や腕の運動に関わります。浅背筋には僧帽筋,広背筋,肩甲挙筋,菱形筋が分類されています。
背骨近くの深いところにある筋肉は「深背筋」で、固有背筋といういわゆる背筋と、肋骨を動かす筋肉とがここに分類されます。
固有背筋は脊柱や頭を支えると同時にその運動をおこなうもので、15種類の筋肉があります。このうちの、とくに姿勢をキープするためにはたらくのが腸肋筋,最長筋,棘筋という3筋の縦長の筋肉で、「脊柱起立筋」と呼ばれます。
ただ、脊柱起立筋は重力下で起き上がって生活しているかぎり、意識せずとも毎日鍛えているようなものなので、弱っているとは言っても姿勢をただそうと背すじを伸ばすことには問題がない人が多いです。
立って歩いているときやランニングをしているときなど、背すじが伸びている方が疲れにくく、痛みが起こりにくいことも実感されるところですが、背すじを伸ばした状態をキープすることが難しい人が多いです。
二本足で立って歩くとき、あるいはイスに座っているとき、背筋(せすじ)を伸ばすとヒトの重心は通常の背骨のカーブと頭の重さのためにやや背中寄りになります。そのため、良い姿勢をキープするには背筋と同時に腹筋を使って前後の筋力で引っ張りあってバランスをとり安定させる必要があります。しかし座っている時にここで背中を丸めると頭が前に突き出て重心が前に移動し、腹筋を使わなくても姿勢が安定するので、からだ(脳)がこの方が楽だと判断して背筋もゆるめてしまうのです。
その状態で座っている時間が長く続いてしまうと、「浅背筋」が特に引き伸ばされて筋力低下や背中のハリ・コリ症状が起こってしまいます。背骨の特に胸椎や肋骨の動きがかたくなり、巻き肩も同時に起こりやすくなるばかりか自律神経のバランスにも影響を与えかねませんし、もちろん深背筋や腹筋はますます怠けます。
そして背骨の動きがかたくなると、背筋群はその影響を大きく受けます。背筋群は腹筋などの他の筋肉と同じように支配神経がそれぞれの筋肉の近くの背骨のトンネルから出ているばかりでなく、背骨にダイレクトに付着しているからです。
日ごろ脊柱起立筋を少し意識して背すじを伸ばしてみましょう(それと同時に腹筋にも力を入れてください)。そうすると背骨のどの部分がかたくなっているかということにも気が付くかもしれません。
(M)