胸郭の変形 呼吸への影響
胸郭とは、12の胸椎(背骨の一部)とそこに関節する12対の肋骨,胸の真ん中にある胸骨(と鎖骨)およびこれらに付着する筋と筋膜(横隔膜を含む)からなり、心臓や肺などの胸部内臓を保護するように覆っている骨格構造です。
胸部の形となると胸部筋肉の形や皮下脂肪の量なども関わりますが、胸郭の形状は肋骨や肋軟骨の形で決まります。前後径と横径の比は1:1.5〜2くらいが正常です。
まず先天性の胸郭の変形には鳩胸や漏斗胸があります。鳩胸は胸郭の前壁が突出した変形で、稀でありそれ自体は一般的に治療の対象となりません。反対に胸郭の前壁が陥凹しているのが漏斗胸で、多くは小児のうちに自然に軽減します。大人の漏斗胸の場合は肺活量が通常より少ないこともありますが日常生活や運動への影響はそれほどないことがほとんどだそうです。ただ、外見上の問題やそれに伴う精神的苦痛が生じることや、重度の場合は呼吸や循環系にも悪影響を及ぼすリスクはあり、これは改善しうる保存療法はなく外科手術となるようです。
その他、胸部疾患や呼吸器疾患,脊柱疾患などがある場合にはその原因疾患の治癒が必要ですが、そのような疾患がない場合にも胸郭の後天的な変形はみられます。
肋骨の走行は脊柱の弯曲に影響を受けるので、胸椎部に機能性側弯が生じれば凸側に回旋するのに伴って凸側の肋骨後部が後方に、反対側の肋骨前部が前方に突出します。
また、座った時の体幹の重心である中部胸椎部を境に胸椎の“ゆがみ”から胸郭が変形し、横隔膜の機能が阻害されて呼吸がしづらいと感じることがあるようです。これは臨床的によくみられるという報告があるという段階でまだ原因等はっきりしていないことが多いようなので鵜呑みにはできませんが、横隔膜は胸腰移行部〜上部腰椎,下部肋骨(肋骨弓),胸骨の剣状突起などに付着しており、その部分がズレたり歪んだり、背中が固かったり不自然に丸まっていたりするとその影響を受けることはじゅうぶん考えられます。
逆に鳩胸や漏斗胸は肋骨と肋軟骨の変形であって胸椎の“ゆがみ”とは別の問題であるために呼吸への影響が少ないと考えることができます。
横隔膜の支配神経は横隔神経で頚椎の“ゆがみ”も関係している可能性があります。
それから、肩甲骨は胸郭に含みませんが、肋骨や横隔膜の動きが硬く使いにくくなっていると呼吸の際に肩甲骨に付着している筋肉が補助的にはたらくことになり肩こりや首こりにつながります。
呼吸時に胸郭が「歪んでいる感じがする」「膨らみにくい感じがする」など、機能的な“ゆがみ”による胸郭や呼吸時の違和感についてはご相談ください。
(M)