サルコペニア……筋力低下を予防しよう
サルコペニアとは、筋肉(sarx,sarco)減少・喪失(penia)をあらわすギリシャ語をもとにした造語で、「加齢による骨格筋量の減少」を意味する用語として1989年にはじめて提唱されました。現在では骨格筋量の低下だけでなく、筋肉量低下にともなう筋力低下や身体機能低下もサルコペニアの定義に含まれます。
加齢による退行変性の一つとしての骨格筋の萎縮、それにともなって腹筋/背筋などの姿勢維持筋や手足の筋肉が細くなり筋力が低下することや、飲み込みに必要な筋肉(嚥下機能)も低下することはよく知られています。加齢によって、筋肉の増加に関係するホルモンの減少や筋肉を動かすために必要な細胞の減少,ミトコンドリアの機能障害などが生じやすくなるためですが、活動や栄養,また疾患によって若年者にも起こります(そのため日本において用語の定義もまだ定まってはいないようです)。
定期的なトレーニングなどの運動をしない人では、30〜40歳頃から筋肉の量は毎年0.5〜1%ずつ減っていき、減少量は加齢とともに増加する傾向があるので60歳以上では20歳代と比べて40〜60%減少しているといいます。
もっとも衰えが早いのが下肢の筋肉・特に大腿四頭筋という太ももの前側の筋肉です。歩く機会の極端に少ない人は、年齢にかかわらず要注意です。
骨格筋の量が低下すると、活動量と消費カロリーが減少し脂肪の蓄積が増加する傾向にあります。
また、大きな毛細血管をもち含有血液量が豊富な骨格筋が萎縮することで毛細血管が減少し循環血液量が低下します。
筋肉は動かさなければもちろん筋肉自体が細くなります。それだけでなく、動かさないでいると筋肉の感覚や運動の指令を脳とやりとりしている支配神経のはたらきが低下して余計に筋力低下を起こします。神経のはたらきの低下によって筋力低下が起きると筋力をうまく発揮できなくなり、ますます動かさなくなるので筋肉は細くなる…という悪循環が起こります。
そんな筋力低下を予防するには、やはり適度な運動をするのが一番。ウォーキングやスクワットなどの軽い運動を取り入れることで筋肉量,筋力,血流循環,神経のはたらき,身体機能の維持向上を目指しましょう。
そして支配神経のはたらきは、背骨の歪みに影響されます。
運動をあまりしない生活をしていると筋力低下だけでなく、関節の可動域も低下してしまい、いざ動かそうとしたときに動きにくかったり痛めてしまったりしますし、支配神経のはたらきが悪くなっていることで筋力をうまく発揮できなくなっている可能性が大いにあります。
下肢の筋肉は特に腰椎のゆがみの影響を受けますので、座っている時間が長くて腰が重だるい人や、良い姿勢を維持できなくてすぐに腰が丸まってしまう人などは運動とあわせてカイロプラクティックによる背骨のケアをご利用ください。
(M)