腱と靱帯と関節可動域(総論)
腱や靭帯は身体の動きと安定の両方に密接に関わっていて、損傷すると強い痛みが起こり、関節を動かしづらくなる(あるいは動かせなくなる)ことはよく知られています。
腱と靭帯は混同されがちですが、その付着部や役割はそれぞれ異なります。
腱(けん)は、分かりやすいところで言えばふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)が踵に付着するところのアキレス腱(踵骨腱)のように、骨格筋が骨に付着する部分の強力な結合組織です。筋肉が赤く伸縮性があるのに比べると、腱は白くて硬く伸縮性はあまりありませんが弾性のある組織です。
筋肉の収縮する力を骨に効果的に伝えて動きに変えるとともに、体の構造を安定させる役割があります。腱は筋肉が収縮するときに伸長することで力を発揮し、筋肉に張力(引っ張られる力)が加わると筋肉とそれに繋がる腱自体が切れる(損傷する)のを防ぐために緩みます。
日常で身体をダイナミックに動かす機会が少なく、身体のあらゆる筋肉の腱の伸び縮みがしにくくなると、関節可動域は狭くなり、バランス力の低下にもつながることが分かっています。
靭帯(じんたい)は、たとえば膝の十字靭帯などのように骨と骨とを結合させている強靭な結合組織の短い束です。骨と骨との関節を包む関節包に癒着していることも多いです。関節を補強したり過剰な動きを制限したりして関節を適切な位置にキープする役割をもっています。伸縮性はほとんどありませんが弾性があり、張力がかかっていると次第に伸びてしまうので、捻挫を放置したり脱臼が正しく整復されずに過ごしてしまったりすると、靱帯が伸びすぎて関節の強度が落ちます。
関節可動域は、筋肉の自発的収縮による力が腱によって伝えられて生じる自動的可動域と、筋肉をリラックスさせた状態で他者によって関節が損傷しない(解剖学的限界を超えない)範囲で動かされる他動的可動域とがあり、他動の方が自動より可動域がやや大きいです。
腱や靭帯が傷んでいる場合は腫れや熱感を伴い自動運動で痛く、ゆっくりした動きでも腱が擦れる音がすることもあり、自動的可動域が狭くなります。
カイロプラクティックで関節可動域の評価をするときは、筋肉はリラックスした状態で他動的可動域の最終域(エンドプレイ域)での抵抗の量や質,そこで圧痛を伴うかどうかなどをチェックします。
そしてアジャストメント(カイロプラクティックの矯正)によって関節がポキッと音を立てるのは、エンドプレイ域を超えて可動性を回復しようとするときに関節滑膜表面の液体張力を克服するときに空隙化が起こるからであり、腱や靭帯の擦れる音ではありません。
座りっぱなしや同じ姿勢や動作の繰り返しだと、関節やそこに付着する筋肉,腱,靭帯の伸縮性や弾性の低下や、急に運動を始めたときもしくはオーバーユースによるケガのリスクが高くなります。カイロプラクティックで、関節,腱,靭帯などの機能回復、そしてケガの予防を目指します。
(M)