骨盤の歪みとは何か
骨盤というと、腰からお尻あたりに広がっている骨で、背骨が上に乗っかっているというような、なんとなくのイメージはお持ちだと思います。ただ、“骨盤”が一つの骨であるならば、骨盤のゆがみとは骨の変形ということになってしまいますが、そうではありません。
“骨盤”は、腰椎の下の仙骨とその左右の寛骨(寛骨は更に腸骨と坐骨と恥骨からなる)とで構成されています(腸骨と坐骨と恥骨は成人するまでには癒合しますので、“骨盤の骨”は仙骨と左右の寛骨の計三つということです)。この三つの骨はお互いに関節していて靭帯や筋肉によって支えられています。
背骨と骨盤との関節部分である「腰椎と仙骨」,それから骨盤の骨どうしの関節である「仙腸関節」「恥骨結合」の部分が、なんらかの理由によって靭帯や筋肉がゆるんだり、骨盤の骨に付着している筋肉の柔軟性が低下したり、関節部分の結合部がズレたり向きが捻れたり傾いたりすることを「骨盤のゆがみ」と表現しているのです。「骨盤のゆがみを矯正するとやせると言われているのはなぜか」や「産後の骨盤」といったトピックでは主に仙腸関節のゆがみに注目していますが、腰仙部と恥骨結合もズレることがあります。医学的には「配列(アライメント)の不整」と言いますが、ここではこのままこれらのズレが生じた状態を「骨盤のゆがみ」と書いていきます。
一般に「骨盤のゆがみ」が女性に多くみられるのは、骨盤のゆがみが生じる原因や理由として、月経などホルモンによる影響を受けて緩みやすくなる時期があることや、骨盤を支える筋肉量が男性に比べて少なく靭帯も柔軟にできていて、妊娠,出産時にはより大きな変化が必要になることなどがあるからです。
ただし骨盤のゆがみの“なんらかの原因”は、外部からの衝撃(転倒や無理な運動負荷など)や不良姿勢が習慣化することなどなどあるため当然男性にもよくみられます。さらに男性の場合は靭帯など軟部組織の柔軟性が女性に比べて低いため、一度ゆがむと矯正されにくいと言われています。
また、体幹を屈曲する(身体を前に曲げる)動きでは腸骨の前側が開くように動くので、腹筋が緩んだ状態で背中を丸めて不良姿勢で座っているとそれもゆがみの原因になります。脚を組むとさらにズレの左右差が増大します。
そして男女問わず筋肉や靭帯の柔軟性や筋力などのサポート力が低下してくる中高年以降では骨盤のゆがみは慢性化しやすくなり、腰痛の原因になったり、座る,立つ,歩くなどの日常動作がスムーズではなくなったりするリスクがあります。
「骨盤のゆがみ」をリセットするには、筋肉や靭帯の柔軟性を回復すること,ズレた関節を矯正すること,骨盤を支える筋肉の筋力がバランスよく発揮されることなどが必要です。
柔軟性の回復や関節の矯正は、習慣的に運動している20代くらいまではストレッチ運動などのセルフケアで可能なことが多いです。ただし、座っている時間が長く運動不足の人や姿勢がわるい人,慢性的な腰痛がある人など、どう動かしたら良いかわからない人,そもそも硬いあるいは痛いから動かせないという人などはいきなりアクティブケアをするのは難しいかと思います。まずはどんなクセやゆがみがあるのかというチェックも兼ねてカイロプラクティックなどのパッシブケアを受けてみませんか。骨盤や腰椎だけでなく、胸椎(背中)や頚椎(首)にもゆがみができているかもしれません。もちろん、産後のゆがみが気になるという場合もチェックや矯正,セルフケアのアドバイスなどサポートいたします。
(M)