「ファシア」とは何か
テレビなどメディアでも近年たびたび肩コリや腰痛、姿勢改善にも重要な器官として取り上げられる「ファシア(fascia)」は、骨,筋肉,血管,内臓,神経など身体のあらゆる組織を覆っている“膜(結合組織)”のことです。これまで“筋膜”として扱われることが多かったのですが、厳密には“筋膜myofasciaもファシアの一種”ということです。
ファシアは組織を包み込んでそれぞれを適正な位置に保持して支え、繋がりあっています。
筋膜にしても、筋肉のように個別に存在するのではなく、筋肉や腱や骨を包むファシア同士は繋がっていて、一つの筋肉が収縮すると周囲の筋肉へ連動させその力を多方向に伝達するという機能があります。
一方で近年の研究で注目されているのが、組織間の動きを滑らかにし、それぞれの独立した運動を行う上でファシアが重要な役割を果たしているということです。
また、ファシアはセンサーの役割も持っています。ひとつは“膜”の張力(引っ張り具合)を感知して、その組織がどの位置にあるか分かる位置センサー・固有受容器です。もうひとつは侵害受容器で、疼痛を感知するセンサーです。
以上のファシアの機能・役割から、ファシアの機能不全が肩コリや腰痛や不良姿勢に関わると言われる理由が分かってきます。
まずファシアの機能不全とは、同じ姿勢を続けることによる過緊張や外傷による炎症などで硬くなったり癒着して動きの滑らかさがなくなったりすることです。固くなると滑走性がなくなるので体を動かしにくくなったり、姿勢が悪い状態から回復しにくくなったりします。
それから、たとえば肩甲骨周囲の筋肉を覆うファシアは硬くなりやすく癒着を起こしやすいということもあり、肩コリや肩甲骨の内側のダルさに関わっているケースが多いと考えられています。
また、ファシアは疼痛そのものを感知するセンサーの機能もあるので、機能不全を起こしていると、動いた時の余計な負荷や組織が傷ついたことなどによる痛みを感知します。ファシア同士は繋がっているので、ある部位のファシアの機能不全による痛みが別の部位に痛みやコリなどの不快感として現れることもあります。これはトリガーポイントと呼ばれるものも含まれます。
それから一部のギックリ腰や、寝違えのような急性頚部痛なども、背骨やその周囲の筋肉を覆っているファシアのピンチングによって生じている場合があります。これらはカイロプラクティックの矯正で改善しやすいケースです。
ファシアが固まっているとき、温めたりさすったりゆすったり動かしたりすることで緩むと紹介されていますので、ご自宅でお風呂に入りながらセルフケアをおこなうことができます。ファシアや筋肉など組織を傷めないように加減しながらおこなってください。
カイロプラクティックの矯正で背骨の“ゆがみ”をととのえると、それで骨や筋肉を包むファシアも“緩む”と考えられますので、ファシアの機能不全によるコリや痛みにも効果を感じていただけると思います。
(M)